恋人のフリはもう嫌です
結婚式のそのあとは

結婚式のそのあとに


「おめでとう」
「おめでとう」

 周りから祝福され、幸せいっぱいの顔で笑う。
 まばゆい光に包まれて、穏やかに微笑んでいる2人。

「藤井ちゃん、ものすごく幸せそうね。森主任」

「はい。新婦の彩芽さんも、とても幸せそうですね。いいなあ。憧れます」

 今日は健太郎さんの結婚式で、吉岡さんと一緒に参列して、フラワーシャワーの中で微笑む新郎新婦を見つめていた。

「なに言ってるの。お相手、いるでしょう?」

 吉岡さんに肘で押され、曖昧に笑う。
 視線の端に、離れた場所にいる透哉さんを映す。

 いつもより華やかなスーツに身を包む彼は目に毒で、まともに直視できない。

 松本さんの話は、あの日に有耶無耶になったまましていない。

 表面上は今まで通りのお付き合いが続いていて、本当に聞きたかった核心部分には触れないまま。

「松本さんに私を会わせた真意は、なんだったんですか?」
 その程度の質問をして揺らぐような間柄なら、いつかダメになるとわかっているのに、その勇気が出ない。
< 212 / 228 >

この作品をシェア

pagetop