恋人のフリはもう嫌です
「あの、すみません。こんな仕事のために呼び出してしまって」
かろうじて謝りの言葉を口にすると、彼はパーフェクト回答を返すものだから、やってられない。
「仕事にこんなも、なにもないよ。それに総務課に来るのは気分転換にもなって、後の仕事の効率も上がるから」
私が触っても、うんともすんとも言わなかったシステムは、彼が来てサササッと作業をするだけで素直に動き出す。
システムに性別があったら、きっとイケメン好きな女性だ。
後で軽くキックしたいけれど、また止まっても困るので自粛する。
サササッという作業も、彼がやると簡単に見えるだけで、彼だからこそなのだと思う。
私には分からない黒い画面を開き、英語のような暗号の書かれた文をスラスラ打ち込んでいった結果直っているのだから。