恋人のフリはもう嫌です
うわ。
一緒に仕事をすると、こういう見なくていいところまで目撃しなきゃいけないんだ。
打ちのめされそうになりつつも、気を取り直して私も彼女と名刺交換をする。
営業、久保 恵梨香 (くぼ えりか)さん。
西山さんは慣れているのか、動じる様子がないのが救いと思えばいいのか、複雑な気分になる。
彼女の耳には、印象的な流線形のピアスが揺れる。
仕事場に相応しくないのでは、と思う私は固いのかな。
チラチラと揺れる煌めきが視界に入って、猫だったら戯れついている。
私の視線は素早く左薬指に移り、指輪を確認して安堵する。
ああ、嫌だ。
仕事に私情を挟みまくりの、自分の感情が嫌だ。
なんだか。自分の性格が悪くなった気がする。
もちろん表面上は和かに取り繕って、西山さんの隣におとなしく座る。
荒井課長が資料を開きながら、プレゼンを始めた。