恋人のフリはもう嫌です

「なにか、おかしいですか?」

 クククッと喉を鳴らした彼に、不満げな声が出る。

「いや。なにか飲む?」

 するりと躱された気がして、「では、アルコールを浴びるほど」と希望を口にした。

「男の家に来て、酒を飲むのは感心しないな。オレンジジュースでいい?」

 聞いておいて要望は却下されるんじゃない、とむくれていると、彼はオレンジジュースを入れたグラスを手にソファに戻った。

 グラスは2つ。
 彼も同じものを飲むのなら、仕方ないかと、おとなしくノンアルコールで我慢する。

「情けない話を聞いてくれるかな」

 唐突に切り出され、ゴクリと口の中のオレンジジュースを飲み干した。

「私で、よろしければ」

 気の利いた返しはできなかったけれど、彼は頬を緩めて頷いた。
 彼に相談を持ちかけられるのは、自分に気を許してくれているようで嬉しかった。
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