春。さよならを言えない俺に、じゃあ、また。
「あ、えっと、あ、軽音に入ろうかと…」
「ああ…」
その人はちょっと意外そうにつぶやくと、放課後にならないと活動していないよ、と言った。そして続けた。
「何か弾くの?それとも歌うの?」
「えっと、ギターなら…」
そう、と、その人は言い、そして、それだけだった。
その後の沈黙を意に返さないようにまた鍵盤をさわり、そのまま、俺のことなど忘れたように弾き続けた。
静かな人だな、と思った。静かできれいな人だ。
窓の外は明るい日差しで光っていた。人のざわめきが聞こえる。でも、音楽室の中は静かで、ピアノの音だけがしていた。
ただ、それだけのことだった。
ただそれだけの時間が、その後の俺の一年を、いや、もしかしたらもっと長い時間を、奪っていった。
それが、なつき先輩との出会いだった。
あれから、三年、先輩が卒業してから二年。俺は高校を卒業する。
先輩が卒業してからは一度も会っていない。以前、遊びに来た元部長の佐藤先輩が言っていた。
「なつきちゃん?なんかアメリカ行ったらしいよ。ああ、隆とも別れてさ」
そうか、そう思って、思うと同時に胸の痛さに気がついて、苦笑いした。
心のどこかでまた会えるかもって思っていたのだろうか。あんなに相手にされなかったのに、今さら。
でも、あいつとも別れていたのか。
「ああ…」
その人はちょっと意外そうにつぶやくと、放課後にならないと活動していないよ、と言った。そして続けた。
「何か弾くの?それとも歌うの?」
「えっと、ギターなら…」
そう、と、その人は言い、そして、それだけだった。
その後の沈黙を意に返さないようにまた鍵盤をさわり、そのまま、俺のことなど忘れたように弾き続けた。
静かな人だな、と思った。静かできれいな人だ。
窓の外は明るい日差しで光っていた。人のざわめきが聞こえる。でも、音楽室の中は静かで、ピアノの音だけがしていた。
ただ、それだけのことだった。
ただそれだけの時間が、その後の俺の一年を、いや、もしかしたらもっと長い時間を、奪っていった。
それが、なつき先輩との出会いだった。
あれから、三年、先輩が卒業してから二年。俺は高校を卒業する。
先輩が卒業してからは一度も会っていない。以前、遊びに来た元部長の佐藤先輩が言っていた。
「なつきちゃん?なんかアメリカ行ったらしいよ。ああ、隆とも別れてさ」
そうか、そう思って、思うと同時に胸の痛さに気がついて、苦笑いした。
心のどこかでまた会えるかもって思っていたのだろうか。あんなに相手にされなかったのに、今さら。
でも、あいつとも別れていたのか。