転生人魚姫はごはんが食べたい!
「つい先日運命的な再会をされて、将来を誓い合われたそうですね」

 あ、はい……

「ですが奥様のご両親におかれましては結婚について快く思っていらっしゃらないご様子。旦那様からはあまり故郷の話には触れないようにと仰せつかっております。一同心得ていますのでご安心くださいませ」

「そういう設定なのね」

「設定?」

「こちらの話よ」

「さようでございますか? ああそれと、大切な人なので丁重に扱うようにとも命じられております。奥様は本当に愛されているのですね」

 イデットさんは心から嬉しそうに言ってくれる。彼らにしてみればいきなり現れた得体のしれない奥様だというのに、当然のように祝福をくれるのだ。

 私は……曖昧に笑って話を合わせておくことが懸命かしら。何かを否定して怪しまれても旦那様が困ってしまうわ。

「異国の地で不慣れなこともあるでしょうが、わたくしイデットを始め、みな誠心誠意奥様のお世話をさせていただきますのでご安心くださいませ。ああ、お城に到着致しましたらまずは湯を用意させましょう。ゆっくりと長旅の疲れを癒さなければ」

 長旅……。海の国からここまで、私たちにしてみれば今日はちょっと遠くまで泳いでみたわ~くらいの感覚だ。しかしお風呂に入れるとは願ってもない提案である。

 お風呂! お風呂に入れるのね! シャワーに湯船、私、大好きなのよ!

 疲れた日にはのんびりお湯につかることも好きだったなと、また遠い昔を懐かしんでします。そうして城門を潜ると私たちの姿を目にして走り出す人物がいた。

「エスティーナ姫!」

 出たわね!?

 走り寄るラージェス様を前に私は速やかに警戒態勢を取る。

「本当に来てくれたんだな! エスティーナ姫!」

 まずは想像以上の歓迎姿勢に出迎えられて予想外だったけれど、いつまでも黙ってはいられない。こちらもすぐに表情を立て直して応戦する。

「三日ぶりですわね」

「ああ、早くお前に会いたかった」

「お元気そうで何よりですわ」

「心配してくれたのか!?」

 私の仰々しい挨拶もそっちのけで旦那様が反応を示したのは前半の部分だった。

「え? え、ええ、それはもちろん。約束通り迎えの手配をいただけたこと、そしてこの度のお心遣いに配慮、深く感謝しています」

「ああ、そっちか……」

「旦那様?」

 何やら認識の食い違いがあったようだ。しかし旦那様はすぐさま立ち直りを見せる。

「俺が迎えに行けなくて悪かったな」

「いえ別に」

「代わりに最も信頼している部下を向かわせたんだが……。イデットも、ありがとな」

「勿体ないお言葉です」

 イデットさんは深々とお辞儀していた。
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