転生人魚姫はごはんが食べたい!
決して忘れていたわけではないけれど。私はその言葉の重みを正しく理解してはいなかったのだと思う。私が嫁入りすることになったお相手は、リヴェール国という人間の国の王子様。
私はラージェス様が王子様だということを都合良く忘れていたのかもしれない。
見える距離となれば近いと思っていたけれど、道なりに進めばそれなりに距離と時間は掛かるものだった。その間、私とイデットさんはといえば……意外なことに会話が弾んでいた。最初の印象は怖そうな人だったけれど、話してみるとやはり饒舌で、私の知りたいことをたくさん教えてくれた。
「本来であれば妻の迎えは夫の役目。奥様には新婚早々に寂しい思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。わたくしの監督不行き届きなのです! ですからどうか、旦那様を責めずにいてやってはもらえませんでしょうか!?」
「も、もちろんですわ。それに話してくれましたもの。どうしてもお仕事が忙しかったのでしょう? きちんと理解していますわ」
ただの人質なのに仰々しいことね。なんだか気恥ずかしいくらい。けれど旦那様の立場上、堂々と人質宣言は出来ないものね。なら、私は形ばかりでもいい奥様を演じておきましょう! 仮にも旦那様に迷惑はかけられないわ。
「なんとお心の広い……。本当に旦那様はいい奥様を見つけられたのですね。ああ、なんということでしょう! わたくし大切なことを伝えそびれておりました。旦那様を助けて下さった恩人に感謝も伝えていないとは失態もいいところです! 奥様。本当に……っ、本当に、ありがとうございました」
イデットさんは少しだけ言葉に詰まりながら何度も感謝の言葉を伝えてくれた。
「私は、そんな……特別なことをしたつもりはありません。ですから顔を上げて下さい。ところでイデットさん。旦那様は、私のことをみなさんにはどのように話ているのかしら。たとえば私の素性とか……」
「奥様は遠く離れた異国のご出身で、尊い身分の方だと」
そうね。一応、海の国の姫として生まれ育っているわ。
「なんでも二度も旦那様を窮地から救った恩人でいらっしゃると」
そうね。二回救ったわ。間違ってはいないわね。
私はラージェス様が王子様だということを都合良く忘れていたのかもしれない。
見える距離となれば近いと思っていたけれど、道なりに進めばそれなりに距離と時間は掛かるものだった。その間、私とイデットさんはといえば……意外なことに会話が弾んでいた。最初の印象は怖そうな人だったけれど、話してみるとやはり饒舌で、私の知りたいことをたくさん教えてくれた。
「本来であれば妻の迎えは夫の役目。奥様には新婚早々に寂しい思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。わたくしの監督不行き届きなのです! ですからどうか、旦那様を責めずにいてやってはもらえませんでしょうか!?」
「も、もちろんですわ。それに話してくれましたもの。どうしてもお仕事が忙しかったのでしょう? きちんと理解していますわ」
ただの人質なのに仰々しいことね。なんだか気恥ずかしいくらい。けれど旦那様の立場上、堂々と人質宣言は出来ないものね。なら、私は形ばかりでもいい奥様を演じておきましょう! 仮にも旦那様に迷惑はかけられないわ。
「なんとお心の広い……。本当に旦那様はいい奥様を見つけられたのですね。ああ、なんということでしょう! わたくし大切なことを伝えそびれておりました。旦那様を助けて下さった恩人に感謝も伝えていないとは失態もいいところです! 奥様。本当に……っ、本当に、ありがとうございました」
イデットさんは少しだけ言葉に詰まりながら何度も感謝の言葉を伝えてくれた。
「私は、そんな……特別なことをしたつもりはありません。ですから顔を上げて下さい。ところでイデットさん。旦那様は、私のことをみなさんにはどのように話ているのかしら。たとえば私の素性とか……」
「奥様は遠く離れた異国のご出身で、尊い身分の方だと」
そうね。一応、海の国の姫として生まれ育っているわ。
「なんでも二度も旦那様を窮地から救った恩人でいらっしゃると」
そうね。二回救ったわ。間違ってはいないわね。