転生人魚姫はごはんが食べたい!
 疑り深く挙動を観察する中で彼女は躊躇いもなく水晶を覗く。

「さっきのお嬢さんはね、いくらでも見えたのよ。あどけなかったお嬢さんが、立派に働く姿がね。けど貴女は……真っ暗」

 あまり言われて嬉しい表現ではないと思った。そんな懸念が顔に出ていたのか、わざわざフォローを入れてくれた。

「お嬢さんは自分で未来を切り開いていくのね。それはきっとこの小さな水晶には映しきれないのよ。本当に残念……」

 妙に限定的かと思えば今度は抽象的な発言ばかり。きっとこれ以上ここにいても姉の手掛かりは得られないのだろう。それとなく退出の意思を示す。

「あまりニナを待たせるのも気が引けますわ」

「ご自由になさって。私に引き止める理由はありませんもの」

「一応、感謝はしておきます。貴女の占い、憶えておきますわ」

「あら、いつでも忘れていいのよ。心優しいお嬢さん」

 口元だけで笑う占い師の姿は少しだけ怖ろしいものだった。早くニナの元に戻ろうと私は占い師に背を向ける。するとその背に向けて声が掛けられた。

「本当に、見えないの」

 あるいは私に聞かせるためのものではなく、ただの独り言だったのかもしれないけれど。

「私には、貴女と王子様が幸せになる未来が見えない……」

 最後に告げられた言葉に足を止めて振り返る。けれど占い師はそれきり口を開かず、沈黙を貫いた。これ以上の言葉を語るつもりはないのだろう。腑に落ちないまま外に出ると、暗い気持ちを晴らすほどの明るさが待っていた。

「ど、どうでしたか!?」

 戻るなり緊張した面持ちのニナに訊ねられる。けれど瞳の奥には隠し切れない好奇心が覗いていて、可愛いなと思った。
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