結ばれる運命だから
11

朝 品川駅を出て 会社までの道。

梅雨空は 気温は低いのに 湿度が高くて。

暑いのか 寒いのか わからない。


どんよりした空を 見上げながら 歩いていると

「は・る・か」

と後ろから 声を掛けられる。


この時間の この場所で

そんな風に 私を呼ぶ人は 1人しかいない。


立ち止って 振り返ると 俊樹が 歩いてくる。

「おはようございます。」

丁寧にお辞儀をする私に

「真面目ー。」

と俊樹は 微笑む。


一瞬、見つめ合い。

胸が熱くなって 私は 目を逸らす。


「その服、似合っているよ。」

俊樹は 笑顔で言って。

軽く手を上げると 私を 追い抜いて行った。


あの時 買った パステルピンクのワンピース。

私は 頬が熱くなって 俯く。


『なんなの! どうして? もういやだ…』

気まぐれは やめて。

忘れようと 頑張っているのに。

時々 不意に 心を乱す。


私は もう一度、大きく空を仰ぎ 歩き出した。


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