さえない私の日常
次の日、私は朝の4:00に起きる。そして、顔を洗い髪の寝癖だけ適当にごまかしてから食堂へ向かう。食堂は24時間いつでも空いているため自分の行きたい時間に行けることが私はいいと思っている。
 私は静かなところが好きなためなるべく人の少ない時間帯を選んでこの時間に試しに行ってみた。
 やはり、まだ寝ている人が多いようで人はいなかった。
「おはようございます。」
 自分の食事を作ってくれることもあり感謝を込めて挨拶をする。
 すると、そこの人が話しかけてくれた。
「1人でいいのかい?もう少しすれば人がくるけど。」
 多分、気を使ってくれたらしい。でも、私は笑顔で答える。
「私、静かなところが好きなんです。」
 すると、それ以上追求せずに「そうなのかい。じゃあ、この時間はとっておきだね。」と言ってくれた。
 優しい人だ。
 私は少し、楽しいと感じた。

 食事を終えたのは4:30ごろである。それから、洗濯に出すものを袋に入れ、その後鞄の中に教科書などを入れる。
 ちょうど5:00の5分前になったところで洗濯物を出しに行く。
 指定の場所はちょうど徒歩5分くらいのところにある。中高一貫で人数が多いため建物が大きくどうしてもそれくらいかかってしまう。
「朝が早いね。」
 そこにいたおばさんにそう言われた。
「そんなことないですよ。」
 そう笑って返してからその場を去った。
 ここで働く人は優しい人が多い。だから、挨拶を自分から意識しなくてもしようと思った。
 部屋に着いたら忘れ物がないか確認してスマホで親に連絡をしてから、外に出る。今日は朝、ジャージに着替えたが明日からはジャージのまま寝ようと思う。
 そして、軽く3キロ走ってから部屋に戻る。戻った時間は18:00だった。体力が無く、また移動時間の長さもあり1時間近くかかってしまった。
 部屋に戻ったらシャワーを浴びてから制服を着る。そして、ジャージはハンガーにかけておいた。
 ジャージは2日に1回だそう。
 私はそう決めた。
 そして、制服のまま、ガイドブックを眺めながら目的地を考えた。

 気がつけば7:30になっていた。そろそろ学校へ向かおうと思い、鞄を手にとる。
 そして、ドアを開けて鍵を閉めてから学校へ向かった。
 教室には既に何人か生徒がいた。しかし、まだあまり人がいなかった。
 私はなるべく気配を消して席に着くと昨日借りてきた本を読んで話しかけにくい雰囲気を作った。
 気がついたら予鈴がなり、周りにも人が揃っていた。
「起立、礼。」
 日直の声により私も立ち上がり挨拶をする。担任の話を聞いた後、5分間の休憩がありその後授業が始まった。
 周りの人が私に話しかけることは無く、平和に午前中は終わった。しかし、お昼休みに問題は起こる。時間が限られていて1人で食べることができないことに気がついた。
 けれど、想定外の出来事により私は救いの道を手に入れた。でも、それは決していいものではなかった。
「1年3組東城名雪さん、生徒会室までお越し下さい。」
 その放送がなり響いたのはお昼休みが始まってすぐのことだった。
 私、何か悪いことしたっけ?
 全く心当たりがなく、不安で少し震えながら生徒会室に向かう。
 迷子にならずに行けたことにホッとしつつ、何故か分からないことの不安感をもちつつ行くと、そこには昨日図書館へ連れて行ってくれた人がいた。
「ようこそ、生徒会へ。」
 そう言われると、私は中へ招かれた。
「あの、何故私は呼ばれたんですか?」
 中に入って聞く。できれば早く教室へ戻って食堂に行き、残りの時間で読書をしたいため早くしてほしいという思いを目で訴える。
「あなた、もしかして昨日僕と会いましたか?」
 しかし、こんなことを聞いている向こうは鈍感なのか無視しているのか私の思いは伝わっていないようだった。
「ああ、昨日はありがとうございました。それで私は何故ここに呼び出されたんですか?」
 私は早く帰りたい一心でそう聞く。
「まあまあ、ここでお昼を食べながらお話ししましょう。」
 その人は席を勧めてくれた。けれど、私は断る。
「すみません、食事にお金はかけたくないため食堂で食べるので遠慮します。」
 すると、その人は笑った。
 そして、別の生徒会メンバーの人が説明してくれる。
「学校側が仕事があるということでここで食事が取れるようにしてくれているから大丈夫だ。」
 それならお言葉にあまえていただこう、と思い食べることにした。
「それならいただきます。」
 私はお昼を食べる。メニューは給食のように日替わりだが1種類しかない。だから、出てきたものを食べる。
「君をここに読んだのは勧誘です。」
 はい?勧誘?
「生徒会への勧誘ということですか?」
 私は聞き返す。
「ああ。」
 1人のメンバーが答えてくれる。
 心当たりはないと言ったら嘘になるが成績で選ばれるものなのだろうか?
 私は一応、この学園に主席合格している。だから、かもしれないとは思ったが果たして本当にそんなことあるのだろうか?
「拒否権はありますか?」
 私は恐る恐る聞く。
「ありません。」
 うげっ。
 私は聞いたことを後悔した。これを聞かなければ無視をして逃げることができたかもしれない。けれど聞いてしまった今、逃げ道はない。
「仕事ってどれくらいあるんですか?」
 私は早食いができる。そのため相手に話を振りながら必死に食べた。
「かなりたくさんあります。でも、寮に19:00には帰れますよ。」
 はい?では部活は?
「部活動のある日はそちらへ行くのならここへは来なくても構いません。けれど週4日は出席してもらいます。」
 私は直感で入ったら読書ができなくなることを悟った。
 そして、私はちょうど食べ終わっていた。
「これはワゴンに戻せばいいですか?」
 にっこり笑顔で聞く。
「あ、はい。お願いしますね。」
 昨日の人が言う。この人がここのトップの生徒会長らしい。
 私はワゴンにそっと置く。
「では、これで。」
 私はさりげなく部屋から出ようとする。
「待ってください、まだ話は終わっていませんよ?」
 顔は笑っているが全く笑っていない目で見据えられて体が震えるが、私は満面の笑みを浮かべて答える。
「ごめんなさい、私は生徒会役員になる気はありません。では、さようなら。」
 そう言って逃げようとした。
 けれど、無駄だった。
「残念ながら、それはできません。拒否権は無いと言いました。」
 ひっ。
 この生徒会長怖い……。
 顔は笑顔だけど、目と声色は笑っていない。そして、さりげなく私が逃げにくいようにメンバーが立ち回っている。
 どうすればここから逃げられるか。考えてみたが分からない。
 私には成す術はない。それが私の脳を最大限に使った結果だった。
「諦めます。」
 私は仕方がないためそう言った。けれど、それだけではない。ちゃんと少しでも自分の利益になる条件をつけてもらった。
「部活動をする気はないため出れる日は必ず出ます。そのかわり、月に1日は開けてください。」
 私はそれだけ条件を付けた。
 そして、それはあっさりと承諾された。
「勿論、それは構いません。」
 今度はホッとできる説明だったため私はやっと肩の力を抜いた。
 それから、昼休み終了10分前まで説明を受けた。
 仕事時間は朝、7:00から始まり19:00までの授業が無い時間。また、委員会がある時はそれを優先すること。そして、食事はここで取れるらしい。ここはカードキーで管理されていてメンバーのみが所持するため無くしてはいけないと言われた。また、週7日毎日だが、月1日は休暇をとっていいらしい。
 私の仕事は書記。そして、それとは別に毎回イベントや企画ごとに係が1つ課されるらしい。
 余談だが、ここのメンバーは入学試験が主席の人と決められているらしく私以外は全員男子だった。中1から高3まで各学年1人ずつだそうだ。
 私は説明が終わるとメンバーと共に廊下に出る。
「途中まで一緒に戻りましょう。」
 どうやらここの人たちは仲がいいらしく、いつもみんなで仲良く戻っているらしい。
 別に常日頃一緒に行動するグループとは違うため、私は抵抗せずについて行った。
「そういえば、名雪さんは昨日何の本を借りたのですか?」
 この学園の生徒会長は佐藤流星というらしい。この人は高3だ。
 そして、よく話す。
 私は素っ気なく返すだけだが懲りなくていろいろな話を振ってきた。
 そんなことより、私はさっきから寒気がする。これは一体何なのだろうか?
 怖くて後ろが振り向けずにいたがその理由はすぐに分かった。
 メンバーと別れて教室に戻ると他のメンバーの周りに沢山の女子の見物人がいることが分かった。
 そして、よく見ればメンバーはイケメンという分類の人間だった。
 つまり、物語のような状態になったということだ。
 私は物語のような状態を遠巻きに見たいとは思ったが決してその主人公になりたいと言った覚えは無い。
「放課後ちょっといいかしら?」 
 完全に一軍らしい子に私は放課後拉致されることになった。
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