My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

「そいつかグレイスか、はっきりしやがれーー!!」
「兄貴やめて!!」

 リディが悲鳴を上げた、そのときだった。

「なんの騒ぎだ!」

 突如、耳がキィンとなるような低音が船内に響き渡った。
 びっくりして振り向くと甲板の方から誰かが下りてくる。
 足音と、それとは違う硬い金属音とが交互に響き、そして現れた人物を見て息を呑む。

 それは左目に黒い眼帯をつけ、杖をついた白髪交じりの男性だった。
 体格は良いとは言えないがその浅黒い肌にはいくつもの傷痕が刻まれ、片方だけの眼光は鋭く一睨みされたら思わず足が竦んでしまいそうな、そんな迫力のある人だ。

「オルタード! 出てきて平気なの!?」

 リディが心配そうな声を上げ、慌てて彼に駆け寄っていく。

 ――この人が、オルタード?


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