My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

(え?)

 ――バンっ! という物凄い音が響いて舌打ちとともに彼が私から離れていった。
 続いてドタバタという階段を上って来るけたたましい足音。そして。

「カノン!!」
「ラグ、セリーン!」

 入ってきたふたりの名を呼ぶ。すぐ横でグリスノートが大きな溜息を吐いた。

「朝まで邪魔すんなって言ったはずだが?」
「てっめぇ……っ」
「カノンから離れてもらおう」

 ラグの低い怒声とセリーンの冷え切った声。ふたりの手がそれぞれ武器に触れているのを見て驚く。

「おいおい、結婚初夜だぜ? 無粋な奴らだな」
「けっ……!?」

 結婚――その言葉で全部思い出した。
 そうだ。わけがわからないうちに皆にグリスノートのお嫁さんだと持ち上げられ、彼もそれを否定しなかったのだ。
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