My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

「銀のセイレーンに、どっかの国の王子が殺されたって話を聞いたことねぇか?」
「あぁ」

 はっきりと肯定したのはラグだ。
 私も声は出なかったが、頷く。
 ――それは確か、この世界に来たばかりの頃にラグから聞いた話だ。

「あれは王子じゃねぇ。金のセイレーンのことだ」

 それからグリスノートは神妙な顔つきで、彼の知る“金のセイレーン”の伝説を語ってくれた。

  ◆◆◆

 世界を破滅へと導く“銀のセイレーン”。それと対をなす“金のセイレーン”は、この世界を創り出したとされる存在だ。
 金のセイレーンは長命で、歌を使いなんでも創り出すことが出来た。――海も大地も、人間も。
 金のセイレーンのもと、この世界は歌であふれていた。
 だが、“銀のセイレーン”がこの世界に現れてしまった。
 金のセイレーンはこの世界を守るために銀のセイレーンと戦い、銀のセイレーンはこの世界から消滅したが、金のセイレーンもその戦いで力を使い切り、伝説とともに封印された。

  ◆◆◆

「――これが、俺が知る金のセイレーンの伝説だ」
「カノン、大丈夫か?」

 気が付いたら、後ろにいたセリーンに支えられていた。
 足に力が入らなかった。

「ご、ごめん」
「いや。横になるか?」
「おいおい、そんなにショックだったかよ」

 グリスノートが意外にも心配そうな声でベッドから立ち上がった。
< 209 / 280 >

この作品をシェア

pagetop