My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
 その声を煩がるような顔をしてから、彼は続ける。

「推測に過ぎねぇが。行ってみる価値はありそうだ」
「え、その街って確かヴォーリア大陸よね? ここからだと船で……」
「ざっと半月ってとこか」

(半月……)

 本当に近い。
 ごくりと思わず喉が鳴る。――そこで、いよいよエルネストさんに会えるかもしれない。
 元の世界に、戻れるかもしれない。でも……。

「じゃあ、ひと月で戻って来れるってこと!?」
「すぐに見つかりゃあな」

 その視線がラグに戻ってくる。

「あんた、その森に行ったことがあんだな?」
「あぁ」

 ラグが俯いたまま小さく返事をした。

「なら、」
「だが、今はもうない」

 酷く掠れた声。

「は?」
「その森も消えた」

 ゆっくりと顔を上げた彼の瞳が、嬉しそうにグレイスと戯れているブゥを追いかける。

「そいつは、その森唯一の生き残りだ」

 どくりと、また胸が嫌な音を立てた。
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