My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「そういう問題じゃ、」
「それに私だってアヴェイラに会いたいもの!」
「――っ!」
その言葉にグリスノートは今度こそ口を噤んだ。
先ほども聞いた気がする『アヴェイラ』という名前。
(もしかしてそれが、例の術士の海賊……?)
「急いで支度してくるから、勝手に出航しないでよね!」
兄をびしっと指差すとリディはそのままくるりと背を向け、岩山の方へと駆け出した。
グリスノートが船縁をどんと叩いて毒づく。
「何を考えてんだあいつは!」
「やっぱり、寂しいんじゃないッスか?」
彼の横にひょろりと背の高い青年が立った。いつもグリスノートの傍にいる気がする人だ。グリスノートよりも大分年上に見える。セリーンと同じくらいだろうか。
「というか、頭……じゃなかった船長。嫁さんも一緒に連れて行く気なんスか?」