俺がしあわせにします
「お先に失礼します。お疲れさまです」

「お疲れさま」

オフィスにいつもの彼女の声が響いた。

とりあえず、和奏さんより先にエントランスに降りる。きっとエレベータで降りてくるだろうから、それが見える位置にスタンバイして。

何度目かに開いたエレベーターの扉から、和奏さんが姿を現した。

さっきと同じスーツ姿だけど、髪型が少し変わっている気がした。

どことなく、色っぽいような。

和奏さんは一人でエレベーターから降りて来た。

どうやら、待ち合わせは社外らしい。

俺は彼女に気づかれないように、距離を取って尾行を開始した。

エントランスを抜けて、左に曲がる。
大通りを駅に向かって歩いていく。

駅で会うのかな?

俺は変装用に用意してきた帽子を目深にかぶった。駅周辺は人が多いから、距離をあけてるとあっという間に見失うかもしれない。

だから、おれは変装して距離を詰めた。

あっ、髪。アップにしたからうなじが見えて色っぽかったのか。

駅を通り過ぎる。

電車には乗らないんだ。
意外と近くで会ってるんだ?

そっか、万が一見つかったって冷やかされるだけだもんな。

俺はそんなことを思いながら、和奏さんを追った。

いきなり止まるから、危うく見つかりそうになった。

そこは、特に待ち合わせするようなところじゃなくて、細道を少し入ったところだった。
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