はやく俺のモノになればいいのに
それが、ユキさんの初恋


長い片想いの始まりだった。


「どうして俺が、異性に関心薄かったのか。腑に落ちた。とっくに惹かれてたんだ」


消えてしまいそうなユキさんの背中を、ギュッと抱き締める。


「どうしたの。モモ」


ユキさんの苦しみが痛いほどに伝わってきた。


同時に


私の好きな人に、好きな人がいることが、どうしようもなく苦しい。


頭では、理解しているのに。


それでもいいから傍にいたいと思うのに。


胸が、張り裂けそう。


「あんまりくっついちゃダメだよ」
「こうしていたいんです」
「……優しいよね。モモは。こんなときも慰めてくれるんだ」


ユキさんの時間は、そのときから、止まったままなのかな。


「俺はね、モモ。自分の心のうちに気づいたところで。どうしようもなかった」


それは、どうして?
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