はやく俺のモノになればいいのに
ユキさんが、静かにゴールを決めた。
リングに当たらなかった。
気持ちいいくらいに
ボールが流れるように、いいや、誘われるように得点が入った。
みんなが得点ボードに向いた瞬間
ユキさんと、私の目が、合った。
大勢いるギャラリーの中で、すぐに、ユキさんは私を見つけてくれた。
いいや
最初から、見ていてくれたのかもしれない。
届いていたのかもしれない。
私の応援が、あなたに。
「あいつの桃葉への気持ちを。俺は。この程度で確認できたなんて思わねえ」
それは、
「だが……あいつは。努力してきた人間だ」
イチヤくんが、ユキさんという人間を、ほんの少し認めた瞬間だった。