はやく俺のモノになればいいのに

ユキさんが、静かにゴールを決めた。


リングに当たらなかった。


気持ちいいくらいに

ボールが流れるように、いいや、誘われるように得点が入った。


みんなが得点ボードに向いた瞬間

ユキさんと、私の目が、合った。


大勢いるギャラリーの中で、すぐに、ユキさんは私を見つけてくれた。


いいや


最初から、見ていてくれたのかもしれない。

届いていたのかもしれない。


私の応援が、あなたに。


「あいつの桃葉への気持ちを。俺は。この程度で確認できたなんて思わねえ」


それは、


「だが……あいつは。努力してきた人間だ」


イチヤくんが、ユキさんという人間を、ほんの少し認めた瞬間だった。
< 448 / 553 >

この作品をシェア

pagetop