婚約者は野獣


「・・・っ」


[絶句]適当な言葉を探すならコレ



森谷の家の何倍か?想像するのを止めるほどの大広間は


宴の準備が整っていて既に全員が腰を下ろしていた

本家に出入りする組員だけでこの人数なの?

桁違いの人数に緊張感が増す


上座に二つ空いた席に誘導され腰を下ろすと


後藤さんが一人立ち上がって話始めた


「今夜は二つ、目出度いことが重なって祝宴を開くこととなった
一つ目、永遠さんの若頭襲名」


聞くや否や歓声と拍手が沸き起こる

それが少し収まると


「二つ目、若頭の婚約が整った」


同じように上がる歓声に
歓迎されたんだと嬉しくなった


「婚約者は隣に座る森谷千色さん」


そこで場内が少し騒つく
「森谷」という名前が漏れ聞こえるから
察しの早い組員さん達には私が誰か気づいた人もいるのだろう


「千色さんは森谷組のお嬢で
現在、東白学園で養護教員をしている
契約は二年、その契約明けと若頭の卒業が同時になるから
そこでお二人の婚儀を行う」


ワァとまた拍手が沸き起こり
正体を明かしても揺るがない歓迎ムードに
少しホッとした


繋がれたままの永遠の手が温かくて
更に気持ちが穏やかになる


図らずも和装で居る自分が
この席で恥ずかしくない出で立ちで
心底ホッとした


「自己紹介しましょうか」


後藤さんに振られて
永遠を見上げると

繋がれた手はそのままに
一緒に立ち上がってくれた


「GWに見かけた組員も居ると思うが
俺の惚れた女だ、宜しく頼む」


先に口火を切った永遠は
恥ずかし気も無く言い切った


「「「「承知」」」」


次々に上がる声に頬を緩めた顔を見届けると


「森谷千色と申します
よろしくお願いします」


お腹に力を入れて大きな声を出した


「「「こちらこそっ」」」
「「「綺麗っす」」」
「「「若姐さんっ」」」


湧き上がる声に二人で頭を下げると
もう一度腰を下ろした







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