婚約者は野獣




「娘の琴だ」


堂本組長はスッと目を細めて愛おしそうに琴ちゃんを見た

それに視線を合わせた琴ちゃんは
天使みたいな笑顔を向けた後で
一度若頭を見上げて・・・諦めたように


「はじめまして、琴です
永遠とは同級生で、千色先生にもお世話になっています。
よろしくお願いします」


腕の中のままで小さく頭を下げた


「期待も裏切らん溺愛っぷりだな」


お義父さんが若頭へ向けてクツリと笑えば


「ほら〜、だから恥ずかしいってば」


仄かに頬を染めた琴ちゃんはプウとその頬を膨らませた


それを見下ろしながら口元を緩めた若頭は
関係ないと言わんばかりに琴ちゃんの頭の天辺に口付けた


「・・・っ」


溺愛だとは思っていたけれど
ここまでとは考えも及ばなくて

見ているこちらが恥ずかしくなった


隣に座る永遠をそっと見上げれば
同じことを思っていたのか
視線が合った瞬間同じタイミングでパチパチと二回瞬きをした




「そういえば、亜樹はどうした」


堂本組長が緒方さんへと振り返る

すると・・・


「亜樹は優羽を迎えに行ったの」


それに答えたのは琴ちゃんだった


「そうか」


「食事会は優羽ちゃんも来るのね」


堂本組長と姐さんもそれに納得したように頷いた


話の見えないお義父さんへは
堂本組長が口を開いた


「亜樹の彼女は、いや、まだか?
絶賛口説き中の女の子は琴の友達で
亜樹が離さねぇから、ほとんど毎日此処に来てる」


「てことは永遠も顔見知りか?」


お義父さんが永遠へと視線を移す


「あぁ、知ってる
琴ちゃんと優羽の作ったご飯を何度か
此処で呼ばれたこともある」


「え?そうなのか?」


お義父さんが鳩豆顔になった







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