婚約者は野獣


マンションに戻るとカウンターへ寄り
首藤さんに付き人が変わることを伝えた


「小島様の登録は・・・」


「抹消して下さい」


「かしこまりました
では麻生様、これへ登録を」


新しい鍵を受け取り

指紋認証システムに登録していく


「荷物を送りたいので
段ボールをお願い出来ますか?」


「はい、ご用意できます。では、後ほどお部屋へお届けいたします。
荷造りが終わりましたら、ご連絡頂ければお部屋まで引き取りに伺います。」


「よろしくお願いいたします」


二人で揃って頭を下げると
エレベーターに乗って部屋へと戻った


「二日振り〜」


入った部屋は二日前と変わらないのに
凱が隣に居ないことだけが胸を締め付けて


玄関脇の凱の部屋に大吾を通すと
私はリビングへと移動した


入ったことはないけれど
凱の部屋に入ったら
たぶん正気ではいられない

燻る想いを紛らわせようと
カーテンを開いた

窓の外は夜の闇が広がり

部屋の灯りの所為で
泣き出しそうな顔をした私が窓に映っている

無理矢理口角を上げると
嫌だと逆らう頬が引き攣った



ポケットの中に手を入れて
携帯を取り出すと一番上の履歴をタップした




「繭香」

(どうした?)

「Moon予約して」

(りょーかいっ)




繭香が迎えに来るまでの間に
首藤さんが持って来てくれた段ボールは
大吾が部屋へと運び込み

凱の物を全て詰め込むことになった


「私が帰るまでに食器は全て処分ね」


凱を思い出す物全ての排除をお願いして

穣さんに挨拶するという大吾と一緒にエントランスまで出た











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