婚約者は野獣


朝食の後片付けを済ませると
部屋に戻った


「・・・っ」


ベッドの上で振動している携帯を手に取ると

まだ登録していない永遠の番号が表示されていた


「はい」

(千色!!)

「はいっ」

(大丈夫か?)

「へ?」

(昨日から繋がんねぇし
なんかあったか心配した)

「・・・ん、と、ごめん?」

(なにもねぇのか?)

「うん」

(そうか)

「うん」

(心配させやがって)

「えっと、昨日は晩ご飯食べたら
寝ちゃったんだよね」

(は?あんだけ寝たのにか?)

「うん、たぶん眠い眠い病?」

(クッ、そうかよ)

「で、どうしたの?」

(あぁ)

「ん?」

(会いてぇ、千色に)

急に声が甘くなった永遠に戸惑って

「えっと、今日は家族と用があって」

(一日か?)

「・・・うん」

嘘をつくことに罪悪感を感じる

(明日は?)

「明日も・・・」

(・・・そうか)

永遠は六つも下の東白の学生で

更には
東白の理事長から貰った書類の中に
名前を見つけてしまった

白夜会 三ノ組 木村組 組長の息子で再来年若頭襲名が決まっている跡継ぎ 木村永遠《きむらとわ》

三ノ組傘下の森谷組の娘如きが
関わってはいけない相手

「ごめんね?私も仕事の準備とかあるし
時間が取れないことが多いの」

態々“仕事”と線引きして
大人との境界線を知らせる

(そうかよ)

「うん、昨日はお世話になりました」

(あぁ)

「・・・じゃあ支度するから切るね」

(・・・)

沈んでいく永遠の声に
ウッカリ声を掛けたくなるのを堪えると

終話マークをタップした






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