婚約者は野獣


あの日の電話を最後に
永遠からの電話は鳴らなくなった

安心していいはずなのに

ちょっと寂しくて

気付けば鳴らない携帯を見つめていることが多くなった


「ハァ」


「どうした・・・千色」


「ん?なんでもない」


「ため息吐くと幸せが逃げるぞ?」


「ため息・・・か」


そんなつもりもないのに
大吾から言わせると

このGW、心ここに在らずとため息を吐く姿しか見ていないらしい


「ねぇ大吾〜」


「どうした?」


「年上の女性と付き合ったことある?」


「何人か・・・な」


「へぇ、やっぱあれ?
大吾君〜とか呼ばれる?」


「なんだそれ、千色の頭ん中
どうにかなってんのか?」


「え?なんか可笑しい?」


「惚れたら歳の差なんて見えなくなんだろ」


ヤケに真剣な大吾の眼差しが痛くて
まともに視線を合わせられない


「土岐の倅は六つも上だろ」


「あーそうね」


「他に好きな男が出来たのか?」


「え?・・・そ、んなこと
あるわけ、ないじゃんね〜
変な大吾〜ハハハハ」


私でなくとも違和感アリアリの返答は
大吾の眉根を寄せることになり


「繭香お嬢の家に泊まった日
本当は何かあったんじゃねぇか?」


「・・・」


痛いところを突かれて
次の言葉が出てこない


「言え」


「・・・」


「なんかある前に言え」


「・・・ん」


ゆっくり視線を合わせると
少しずつ吐き出した





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