婚約者は野獣
「ハァ」
包み隠さず吐き出した後の
大吾の反応は大きくため息を吐いただけ
その口から次は何が出てくるのか
想像もつかなくて俯いた
「千色」
「ん?」
「東白へは変装してんだよな?」
「うん」
「暫くそれで乗り切れ
その内、三ノ組の坊も飽きるだろ」
「そっか」
「今は物珍しいだけだろ」
そりゃ繭香みたいに美人じゃないけど
珍獣みたいな言われ方は凹むじゃん
「此処は一ノ組の若頭が住んでる
だから、三ノ組の坊は寄り付かねぇ
GWが開けたら暫くは学校と此処の往復に徹した方が良いな」
「うん」
「買い物とか・・・生活のことは
全部俺がやるから」
「うん」
「そうと決まったらやり納めに
買い物行くか?」
「行くっ」
。
暫く行けない買い物は
収監される囚人レベルに切なくて
普段なら足を進めない奥の棚まで隅々歩き回り
「どうせ直ぐ来られる」
そう笑った大吾に呆れられた
大量の買い物袋を一人で抱えた大吾は
「手伝う」と言う私を鼻で笑って
結局最後までバッグ以外の手荷物が増えることは無かった
「楽しかったね」
車に乗り込んで流れる景色を見ていると
「そうだな」
疲れたはずなのに爽やかな笑顔を向けてくれる大吾に
「ありがとうね」
「ん」
渋滞で進まない車の
心地良いシートに
微睡む意識を手放した
。
この日の私の姿を
永遠が見ていたなんて
それをGW開けに打つけられるとは
能天気に寝ていた私は知る由もなかった