幻惑
「パパが反対するっていうことは、世間みんなも 同じように思うっていうことよ。それを乗り越える覚悟をしないとね。」

母の言葉を聞きながら私は自問する。

本当に私には、その覚悟があるのか。

でも、翼と離れることはできない。
 
「ママ。私、来週、家を出るの。翼君と、暮らすから。」

私の途切れ途切れの言葉に
 
「そう。結花里は決めたのね。覚悟したっていうことね?」

と母は聞く。私が頷くと

「それなら、パパとママを見返すくらい頑張って、幸せになりなさい。」

と言い、私の肩を抱き締めた。
 
「ママ。」

と言うと私は、母の肩で号泣してしまう。

子供のように。声を上げて泣きじゃくる。

母は、私の背中を そっと撫でてくれた。

小さな子供にするように。
 
 
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