幻惑
それを翼に伝えようとした時、翼のスマホが鳴った。
 


「あっ。あいつだ。」

と言って、翼は一瞬 私を見た。

私が頷くと、翼は通話ボタンを押した。

私の前で。
 
『もしもし。うん、受け取った?早く書いてくれよ。』

奥さんからの電話。

翼は、あえて私の前で話す。
 

『うん。うん。それは仕方ないだろう。うん。そんなこと、俺に言うなよ。店長に相談すればいいだろう。うん。うん。いいよ、送ってくれれば。うん。とにかく、早く書いて送ってくれよ。』


私は、そっとキッチンに移動して、コーヒーを淹れた。
 
『わかった。頼むよ、じゃあな。』

電話を切った翼に、私は そっとコーヒーを渡す。
 

< 165 / 263 >

この作品をシェア

pagetop