幻惑

「何言っているの。今の結花里を見て、追い返すわけ、ないでしょう。」

あんなに翼と離れたくないと思っていたのに。

聡美に言われて、私は家が懐かしくなっていた。
　
「結花里は家に帰って、離婚が成立するまで戻らないって言うのよ。増渕さんに。本当に結花里のこと好きなら、増渕さんだって、何とかするでしょう。」

聡美に言われて
　
「もし翼君が、何もしなかったら？」

私はまだ、翼を失いたくないと思っていた。
　
「その時は結花里、諦めるの。もし、それでも増渕さんが、何もしないとしたら、この先だって、変わらないっていうことだよ。」

聡美はそう言って、私の顔を見る。
　
「本当に結花里が必要なら、ちゃんと離婚して、結花里のパパに頭下げるでしょう。」

私は、聡美の言葉に頷いた。