白雪姫に極甘な毒リンゴを 短編集

「桃ちゃん?」


 優しい声に導かれるように顔をあげると
 十環先輩が心配そうに見つめていた。


「どうしたの?
 指輪、嬉しくなかった?」


 勘違いをさせたくなくて
 私は思い切り
 ぶんぶんと首を横に振った。


 十環先輩はなんで
 ブサイクな泣き顔の私にも
 優しいんだろう。



 ちゃんと伝えなきゃ!


 十環先輩とお揃いの指輪なんて
 嬉しいですって。

 十環先輩と出会って
 私を選んでくれたことが
 すっごく幸せですって。


 そして……


「十環先輩……大好きです」



 心の中だけで
 つぶやいたつもりだったのに。


 最後の想いだけが
 笑顔とともに口から飛び出していた。

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