触れたい、できない
「…は?!何だよいきなり」
軽く聞いたつもりなのに、やけに大げさに反応する蓮。
………おやおや?これはもしかして…
「好きな人、いるんだ?」
ニヤつきながら、蓮の顔を覗き込む私。
柄にもなく少し顔を赤くした蓮は、ふいっと顔を背けた。
「ばーか、いねえに決まってんだろ?んだよ急に…」
そんな、明らかにいますって顔で言われても…
「…はーん?へー?ほーーん?」
私はいつもと逆の立場をめいいっぱい楽しんで、蓮をいじる。
こんな蓮、小学校の学習発表会で、セリフを盛大に間違えちゃった時以来だなあ。
…ふふ、なんか楽しくなってきたぞ?
「嘘は泥棒の始まりですよ〜?れーんくーん?」
「〜っあぁくそ!こっち見んな!!」
ニヤニヤしながら顔を見続ける私にしびれを切らしたのか、顔を思いっ切り掴んでくる蓮。
「んぐっ!ちょっと?!女の子の顔を掴むとかないでしょ!」
蓮に顔を掴まれたまま、プンスカする私。
…ちょーっといつものやり返ししたからって、そんな怒んなくても!
私は蓮の手をベリッとはがし、前髪を整えた。
「もー私と蓮の中なんだから、そんな照れなくたっていいのに」
まだ少し顔の赤い蓮に、ごめんってば、と謝る。
「……………だからだよ、アホ」
…………え?
顔を背けたまま、つぶやかれた言葉。
それに私は一瞬戸惑う。
_今、だからだよって…
「蓮?今の、どういう_」
_プシューッ
見事に重なってくる、電車の到着音。
「ほら行くぞ。」
なった瞬間に、すぐ歩き出す蓮。
…っとに、何でいつもこの電車音は嫌なタイミングで鳴るんだ!
「あっちょっと!待ってよ蓮!!」
私は前を行く蓮を追いかけながら、ふと考えた。
……もし蓮に好きな人がいたら、私って邪魔なんじゃ?