桜田課長の秘密
「いいですね、理想的な反応です」

嬉しそうに目を細めながらうなずいた彼が、すっくと立ち上がって背を向けた。

「――え?」

正直なところ、貞操の危機を感じていた。

もっというと、このまま処女を捨ててしまうのもアリかな……
なんて、流されかけていた。

それほどに、この男の醸し出す色気に飲み込まれていたのだと思う。

なのに彼は、部屋の隅にあるパソコンデスクに座ると、黙々とキーボードをたたき始めたのだ。

「あの……課長?」

「黙って!」

私には目もくれずに文字を入力していく。

そうしてピタリとキーの上の指が止まり、今度は、腕を組んで画面の文字を読み上げていく。

『カナコは、男の指が自分の腕を這いまわるのを、潤んだ目で見つめていた――そうして、持ち上げられた指が唇にあてがわれた瞬間、こくりと喉を鳴らす――』

「課長っ!」

全身の血が、カッと熱くなった。

今ここで起こった出来事、そのままじゃない!

「まさか助手って、こういうことですか?」

「そうですよ、なにか問題でも?」

「問題しかありませんっ!」

バシン、と座卓を叩いて立ち上がった。
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