桜田課長の秘密
「じゃあさ。お詫びに、ひとつだけお願い聞いてくれる?」

「で、出来ることであれば」

「簡単なことだよ。呼び方を変えて欲しいんだ」

「呼び方? なんの……ですか?」

「俺の名前。相田さんじゃなくて、涼平って呼んで」

「そんなっ、営業のエースを呼び捨てだなんて、絶対ダメです!」

冗談じゃない。
そんなことをしたら、ハイエナ軍団に殺される。

「そっか、分かった。……無理言ってごめんね」

うう……反則ですっ!
そんな、子犬のような目っ!

「ん――っ、涼平さんっ! せめてこれで許してください」

「うん、いいよ」

あっさりと言い放った彼の表情に、なんとなく釈然としないものを感じた。

「じゃあ、とりあえずは友達からってことで、よろしく」

「あ、はい。よろしくです」

当然のように差し出された手を、無意識に握り返し。
それからやっと気が付いた。

この人は、まぎれもなく営業のエキスパートだ――――と。

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