幼なじみの彼とわたし
知っている限り、今まで亜衣に男の影はなかったと思う。


小学校のころは、登下校はいつも一緒で、遊びに行くのも集団で遊びに行ってた。
それにあの頃は、つきあう、とかそういうの、まだなかったしな。


中学になるとみんな恋愛に興味を持ち始めて。
亜衣を狙うヤツもいたけど、一緒に帰れるときは一緒に帰るようにして、俺と亜衣がふたりでいる姿をまわりに見せていたから、つきあっているか、それに近いと思っていたに違いない。

まぁ、亜衣のほうは告白されてもピンと来てなかったみたいで、「急にどうしちゃったんだろう」「どこにつきあえばいいんだろう」なんて、本気で思っていたようだけど。


高校に入ってからの三年間は、少し距離を置くこととなったが、彼氏ができたというのは聞かなかった。
距離を置く原因となったのが、身長が伸びるとともにモテ始めてしまった俺にあるから、不用意に近づくわけにはいかなかった。
女子は本当にこわい。
だから、千尋に、亜衣に何かあればすぐ教えてもらうよう頼んでいた。


これは、大学に入ったあとも一緒で。
俺は別の大学に進学したため、亜衣と同じ大学に行った千尋には引き続き亜衣を任せていた。
大学でも、何度かコクられてはいたようだけど、つきあうまでは行かなかったらしい。


「高くつくからね!」

千尋に何度言われたことだろうか。
俺の気持ちを知っていて協力してくれたのだろう。
そのあたりは何も聞いていないが、バレバレなんだろうな。


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