不良品(彼)お預かりします!
「なんで、こんなことになってるんですか?」

「こんなこと、ですか?」

「えっと、あのアプリのこと...です。」

とりあえず、近くのカフェで少し話をすることにした。

「それは、色々あるんですが、結局は、自業自得と言いますか。」

「え...?」

「話すと長いので、少し経ってからにします。心の整理もついていなくて。」

「そ、そうなんですか...。」

そういえば、なんか、最近こんなきっちり敬語話すこともなかったな。

というか、異性と面と向かってとか...。

あれ、私って意外とコミュ障なのかな。

緊張すると意味わかんないこと考え始めちゃう...。

「えっと、あの、とりあえず、そういう専門の人の所に話してみるのはどうでしょうか。」

「専門の人とは...?」

「えっと、例えば、警察とか。」

と、言うと、涼夜さんは少し表情を曇らせた。

「それは、ごもっともな提案ですが...。
きっとまともに取り合ってくれないでしょうね。」

「えっ、どうして。」

「似たような経験があって。
当時は僕が被害者というわけではありませんでしたが、何度やっても状況は変わりませんでした。」

「信じてもらえないってことですか??」

「はい。それどころか、逆効果というか...。」

「逆効果?」

涼夜さんは暗い顔をしている。

なんとなく察するけど、返り討ちに遭っちゃったとかそういう感じなのかな。

「本当は、巴さんのような一般の未成年の方を巻き込んでしまうのは申し訳ないと思っています。でも、どうやら僕に気づいて頂いたのは、貴女だけのようでしたから...。」

私大丈夫かな。

凄い巻き込まれて当然、ヒロイン感がぷんぷんするんだけど。

いいよ、可愛くて扱いがいいヒロインならね。

でも、実際に巻き込まれて、私も不良品になっちゃったら死にたくなるぐらい辛いんだろうな。

そんなの嫌だな。

「あの、そういえば、お兄さんだと思うんですけど、涼夜さんのこと、探してましたよ。」

「兄に会ったことがあるのですか?」

「正確にはそうか分からないですけど、えっと、お菓子屋さんの店員さんです。」

「確かに、兄はパティシエを目指していましたが...。」

「じゃ、じゃあ、きっとお兄さんですよ。今からお兄さんに会いに行きましょうよ!」

私がそう言うと、何故か一層表情が曇る涼夜さん。

「あの、兄にはこのこと、話したんですか?」

「え、あ、えっと、
お店にあった写真を見て、見たことあるかもしれないってことだけで、どこで見たとかいうのは話してないです。アプリのこともなんか、言い辛くて...。」

「そうですか。」

「なんか、すみません。」

「巴さんが謝る必要なんてないですよ。むしろ少し安心しました。兄は心配性なので。」

「そ、それは良かったです...。」

「それどころか、僕は巴さんに命を助けて頂いて...どう感謝しても感謝しきれません。
ありがとうございます。」

やばい、なんかこういうめっちゃ国語っぽい表現、きいたことないんだけど!!

「いえいえ、そんな...。えっと、ご無事でなにより、です。」

「本当はせめて何かお礼をと思っているのですが、あいにく、出来ることが限られていましたから...。」

「あ、いえいえいえ!!
大丈夫です。全然、気にしないでください!!」

うわぁ...、なんか、こう、仕草とか、言葉遣いとかで分かるけど、教養みたいなのめっちゃある人なんだろうな。

そうは言っても歳はそんなに離れていないと思うんだけど。
< 19 / 33 >

この作品をシェア

pagetop