カッコウ
淡々とした孝明は、みどりをリラックスさせてくれる。
 
「実家は千葉。今は杉並の社宅だけど。」

健二も会社の独身寮に入っている。みどりは頷いて、
 
「一人暮らしってどうですか?」と聞いてみる。
 
「うーん、ほとんど寝るだけだからね。」

と孝明は苦笑する。そして、
 
「みどりちゃん、就職は都内?」とみどりに聞く。
 
「都内だけど小さな会社です。希望のところは全部駄目で。」

就職したら家を出るつもりだったみどり。でも内定した会社の待遇で都内の一人暮らしは厳しい。
 
「いいじゃない、内定していれば。卒業までに決まらない人も多いでしょう。」

静かに話す孝明。みどりの大学は無名だから。確かにまだ決まっていない友達も多かった。
 
「佐山さんは優秀だから。いいですよね、都市銀行なんて。うちの大学では絶対無理。」

少し膨れた顔でみどりが話すと、孝明は温かい目でみどりを見た。そして、
 
「運が良かっただけだよ。入ってみたら結構大変だし。」と笑顔で言う。

その時“この人となら付き合ってみたい”とみどりは思っていた。
 
 
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