カッコウ
何故、茂樹が好きなのだろう。みどりはただ遊ばれているだけなのに。

ずるい茂樹はいつも逃げ道を用意している。愛されていないこともわかっているのに。
 
どれだけ時間をかけても茂樹に届かない思い。わかっているけれど、みどりは断ち切ることができない。

意地なのか。ただの執着なのか。自分では純粋な愛だと思いたい。
 


熱めのシャワーを浴びた後、みどりはベッドに腰掛ける。

狭いビジネスホテルの部屋はそれ以外寛ぐスペースがない。テレビを点けると9時前のニュースが流れてきた。

“このまま泊まろうかな”とベッドに横たわる。
 
今から埼玉の自宅まで帰ることが、急に億劫になる。

友達の家に泊まると連絡すれば、親は何も言わない。

この部屋で一人朝を迎えることと、これから帰ることを天秤にかけるみどり。

“帰るのはやめよう”

と決心して携帯電話を取ると、着信を知らせるランプが点滅していた。
 
シャワーを浴びている時にかかってきた電話。

茂樹かと思って開くと、紗江子からだった。高校時代の友人、紗江子とは今もよく会っている。

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