カッコウ
その日から、みどりの卒業まで、孝明はあちこちに頭を下げる日々だった。

ふたりの親に報告し、結婚を許してもらう。

職場には結婚の予定を話し社宅を手配してもらった。
 
「孝ちゃん、ごめんね。孝ちゃんばかり怒られているみたいで。」

みどりはすまなそうに孝明に言う。
 
「みどりこそ、つわりで苦しいだろう。代わってあげられなくてごめんね。」

自分は何も食べられないのに、みどりは孝明の食事を用意してくれた。
 
「ううん。これからは孝ちゃんの腕に、全部かかっているから。健康管理も奥さんの仕事だよ。」

とみどりは微笑んだ。
 
新居が整い二人の生活が始まる。

みどりの待つ家に帰る幸せは、孝明をいつも笑顔にした。

みどりが安定期に入ると、ささやかな結婚式をした。

まだお腹が目立たないみどりは綺麗で、孝明は得意だった。
 
みどりは時々、怯えたような顔をしたけれど、孝明はそれを出産の不安だと思った。

孝明よりも若いみどり。

まだ社会に出たこともないみどりだから。

それでも母になるみどりに孝明は感謝していた。
 


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