鬼蝶乱舞
一の蝶

目を開くと私は静かに起き上がる
いつも懐かしくて、大切な夢なのに
私はいつも目が覚めると忘れてしまう
私は月影蝶華(つきかげ・ちょうか)
化け物の中の化け物と言われてもおかしくはない
何故、私が化け物だと自分を言うのか
それは、人ではない力を二つ持っているから
炎蝶
色とりどりの蝶の形をした炎を出せる
勿論炎の色によって力が違う
そしてもう一つは
人から恐れられている 鬼 だ
両親は私を殺そうとした
いや
楽にしてあげようとしたのだろう
私の胸には傷跡がある
刃物で一度は刺され意識不明の重体になったものの生き返り、両親はそのまま亡くなってしまった
私は嘆いた
私は叫んだ
何故私が生きているのだろう
化け物は
結局
化け物なのだろう
「はぁ、学校が憂鬱だ」
そう言いつつも制服に着替える
私は白い手袋をして部屋を出ると子供達がトコトコと寄って来ては私に花束を渡す
「ありがとう」
化物に花束をくれる優しい人達
私はそんな人達を守りたい
『行ってらっしゃい!ちーちゃん!』
子供達はニコニコとして手を振る
「おぅ、行って来る」
私はそっと子供達の頭を撫でて頷く
歩き出すと何かの気配を感じた
(何だ………?)
ギロリとそちらを睨む
けれどその気配はすでに消えていた
「嫌な予感がする」
私は溜息まじりに息を吐く
妖たちが騒がしいから耳を塞いだ
周りの人たちの声や心拍、呼吸が聞こえる
あぁ、憂鬱だ
「おやおや」
不意に聞こえる嫌な声
私は目を開けるとそこには一人の男性が立っていた
「こんなとこに居ては食べられてしまうよ?」
薬屋の男、本性は化け猫の環
私は無視して歩き出す
「具合はどうかな?」
環の言葉
それは私がこの人間の姿でいられる事のことだ
私は一週間に一回は本性にならなければいけない
一回しなかったことがあった時、環に助けられた
釈だが助けてもらった恩返しはしたはずだ
環は私の首に指をヒタリヒタリと当てククッと笑っている
「生憎、貴方に構うほど時間はない」
私はギロリとその手を掴み睨む
「おやおや、つれないねぇ」
環はヘラヘラと笑いその手を見つめる
「さぁ、お行き」
私を見つめるその瞳
「言われなくても行くさ」
私はそれから目を逸らす
(一回は屋上でなるか………)
私は急いで歩き出した
屋上に着き、私は鞄を下ろす
背伸びをして
「鬼人」
そう呟く
鬼火が身体の周りに纏う
身体が燃えていく
そして燃え尽きた後
そこに居たのは   鬼 
「やれやれ、この姿はあまり好きではないのだが」
私は溜息を吐き空を見上げた
近くで扉が開く音がする
そちらに目をやると
一人の男が
我を見て
キラキラとした目を向けていた
………………こりゃいかんな








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