鬼蝶乱舞
ニノ蝶

人がいたとは驚いた
我はそっと逃げようとしたが男が声を掛ける
「月影さんだよね!?」
近付こうとして来る男の胸ぐらを掴み
「だとしたら何だ」
と睨む
男はニヘラと笑い我の手に触れる
びくつくと男は微笑む
「綺麗な手」
………は?
我は固まる
そしてゆっくりと男の胸ぐらから手を離す
綺麗だと?
この姿が?
「意味が我には分からんな」
我は鼻で笑い人の姿に戻る
私は男を睨んだ
「今の姿を見ていた事言ったら殺す」
私は化物
人を殺すくらい
とても   容易い
「分かってるよ」
男はニコニコと笑ってそう言った
本当か?
私は疑いの目を向けた
男の名は仁、私と同じ教室らしい
私は地面に座りそっと欠伸をする
「それで?用件は」
きっと用があって来たのだろう
さっさと終わらせ………
「んー?特にないよ」
「そうか…」
仁は私を見つめてまた笑った
何なんだ
「私の顔が変なのなら言え」
鬼火で燃やしてやる
仁は慌てて顔を振り謝った
「鬼の姿と全く違くて」
そりゃそうだ
鬼の姿の時は一人称も姿も違う
化け物だから
「だろうな」
私はそれだけ言うとフェンスに足をかける
そして飛び降りた
仁はギョッとして下を覗く
私は回転して着地する
「またな」
そう口パクで言うと私は自宅に帰った
「仲間………」
そう言った仁の言葉など知らない私だった
家に帰っていると環が家にいる
私は扉を閉めて何処かへ行こうとしたが環がそれ止めた
「つれないねぇ」
いつものようにそう言うが今日は具合が悪そうだ
「環、お前怪我してる」
妖の匂いがする
環は強いが為に妖たちに手は出さない
だが妖たちはそれを良いことに手を出す
私は鬼人となり環を運んだ
環の怪我を手当てして鬼火を当てる
痛みで唸るが熱くはないだろう
怪我をあらかた治して、我は妖共の元へと消えた
「おい」
我の低い声が妖たちを震わす
鬼は強い中でのトップ
しかもこの我だけ炎蝶が使える
「環の仇取らせてもらおうか」
妖たちは泣き我を見た
我が手をかけようとしたらその手を誰かが掴む
「仁」
そう、我の手を簡単に掴めるのは仁だった
我は掴かんでいる手を振り払う 
「妖たちは理由があったんだろう」
仁は優しく妖たちを撫でる
我はギロリと睨み
「仲間を傷つけていることだとしてもか」
仁は目を見開き、妖たちを睨んだ
「本当か」 
仁が黒い炎に包まれ現れたのは鬼人の姿
我は驚く
仲間だと?
認めはしないがまさか近くにいたとはな
我は仁に任せてその場から消えようとした
が仁が逃す訳ない
「蝶華さん」
優しく微笑み我に近付く仁
「気安く呼ぶな」
我はギロリと睨み返し歩き出す
「仲間になろうよ」 
「断る」
鬼も人も簡単に裏切る
我は一人でいい
そう思い、その場から炎となり消えた








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