ノクターン

翌日、私も課長に結婚の報告をする。

私は名字が変わるので、智くんよりも手続きが多い。
 

「結婚後も 続けてお世話になります。色々、ご迷惑をかける事が 増えてしまうと思いますが、宜しくお願いします。」

丁寧に頭を下げる私に 課長は
 

「相手は、どんな人なの。」と聞いた。
 
「それが、課長もご存知の人で。」

私は、隠さずに話す。
 

「えっ。社内の人?」

課長は ちょっと驚いた反応をする。
 


「いいえ。2カ月くらい前に、代理店契約の件で来た I商事の人です。」
 
「ああ、高村くんの幼馴染だって言っていた人?」
 

「はい。」私は、少し照れて俯いてしまう。
 
「何だよ、俺がキューピットじゃないか。いや、あの時 高村くんに同席してもらって 本当に良かったな。」


課長は、ちょっと得意気に笑う。
 


「本当に、ありがとうございました。」


あの時 課長が私でなく、他の社員を同席させていたら 今の幸せはなかった。


縁を感じる。



そして、私は素直な気持ちで 課長に感謝した。
 

< 110 / 270 >

この作品をシェア

pagetop