ノクターン

智くんは、大きな紙袋を4個持って リビングに戻ってきた。
 

「お父さん、遅いから そろそろ行くね。」

と、私達はアパートに向かった。
 

私のアパートには 駐車場がないので、近くのコインパーキングに車を預けた。


部屋に入ると
 

「マンションの部屋、どんな風になったかなあ。」

と智くんは言った。
 

「私、すごく楽しみなの。これからずっと あのお部屋で智くんと暮らせるんだね。」

私の胸は すでに高ぶっていた。
 

「そうだよ。そのうち家族が増えて、狭く感じるよ。」
 

「智くんそっくりな男の子かな。」
 
「えー。俺、麻有ちゃんそっくりの女の子がいいなあ。」
 
「だめ。智くんが 女の子可愛がったら、私 焼きもち妬くから。」
 
「大丈夫、麻有ちゃんが一番だからね。」
 


「この部屋も 今日で最後だね。」と私は言う。
 
「そうだね。この部屋には たくさん思い出があるね。ずっと覚えていようね。」

智くんは優しい。
 


「ありがとう。智くん、大好き。」私は、智くんの胸に顔を埋める。
 

「こちらこそ。麻有ちゃん、出会ってくれて ありがとう。」


智くんは 私の髪を撫でてくれる。

何故か私は、涙が溢れてしまう。

幸せと、喜びと、ほんの少しの不安と。

徐々に感情が高まって 私は泣きじゃくってしまう。
 


「大丈夫だよ、何も心配しないで。俺がいつも そばにいるからね。」

智くんは ずっと私の髪を撫でていてくれた。
 


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