ノクターン
「はい、麻有ちゃん。」
と智くんが、私のお皿に 料理を取り分けてくれる。
「俺、マジで智之のことを 誤解していたかも。こういう奴だと思わなかった。」
とお兄様に冷やかされ。
「いいの。麻有ちゃんが、俺を変えたんだから。」
智くんも、開き直ったように もう否定しない。
「はい、ごちそう様。いつもいつもね。」
お母様の言葉に みんなで笑う。
頬を染めて俯く私に
「すごく可愛いわ、麻有ちゃんて。」
とお姉様も笑い。
「でしょう。」
と智くんが同意する。
私は、顔が熱くなって 手で仰いでしまう。
「この牡蠣、お酒が入っているのかな。」
と言うと、また みんなが笑う。
「本当に可愛いんだよ。」
と言う智くんに
「今日は、智之に 当てられっぱなしだね。」
と和やかな夕食は 続いていった。