ノクターン

夕食後、いつものように 智くんに抱かれて教会のパンフレットを見る。


神聖で荘厳な雰囲気の中での、素敵な結婚式になるだろう。
 

「いいね。ここしかないよね。」

と智くんは言う。
 
「私も。ここがいい。あの時の事、思い出すね。」

智くんを見上げて言うと
 


「あの時、結婚式見ながら 花嫁さんと麻有ちゃん 重ねていたのかも。」

智くんは 後ろから私を抱きしめる。
 


「いつの間にか 手を繋いでいた事、覚えている?」
 
「覚えているよ。俺、ちょっとドキッとしたんだ。はじめてだったから。ああいう気持ち。」


智くんの素直な言葉に 私は胸が熱くなり。
 


「ありがとう。」と言う私は、涙が滲んでいた。
 

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