ノクターン
29

ゴルフの後、食事をして 松濤の家に寄る。


お母様は、やっぱりきちんとして 私達を迎えてくれる。
 


「いつも突然で、夜遅くにすみません。」

と私が言うと
 

「何言っているの。自分の家なんだから。いつでも気兼ねなく寄ってよ。」

と言ってくれる。
 


コーヒーを入れた後で
 


「紀之が、麻有ちゃんを 褒めていたわよ。」

とお母様が言う。
 

「いやだ。私、失礼な事ばっかり 言ってしまっていたのに。」

私は小さく言う。


お母様は ゆっくり首を振ると
 


「智之が変わったって。麻有ちゃんが良い子だから 智之も明るくなったって。」
 


「俺、今まで そんなに暗かった?」

智くんが聞く。
 

「別に 暗くはなかったけどね。今は すごく幸せそうだから。」
 


「まあね。新婚だからね。」
 
「ほら。そういう事、絶対言わなかったじゃない。」

お母様は笑う。

私達は、見つめあって微笑む。
 

「お父さんも紀之も、それなりに 色々な人を見ているじゃない。智之が連れて来た人なら 誰でもいいって訳じゃないわ。麻有ちゃんの 誠実な人柄がわかるのよ。」

お母様は 満足そうな笑顔で言う。
 

< 155 / 270 >

この作品をシェア

pagetop