ノクターン

「ありがとうございます。私も、智くんのおかげで変われたから。」
 

「これからは、もっと私達にも甘えてね。」
 


「あ、そうだ。」

と智くんは 石の教会のパンフレットを差し出す。


お母様は、ゆっくり目を通して
 


「素敵じゃない。いいわね、ここ。」

と言ってくれる。
 

「隣接したホテルで、披露宴ができるらしいよ。」

智くんが説明する。
 


「あとは、日取りね。いつ頃なら予約が取れるのかしら。今から準備して 衣装とか招待する人決めたり。早くても春よね。」
 
「3月は、会社が決算でしょう。4月以降でいいんじゃない。」智くんが言う。
 


「それでいいの?あなた達は。」

お母様の言葉に、私達は頷く。
 

「パンフレット置いていくから。お父さんにも聞いてみてよ。」
 


年末で 帰りが遅いお父様には会わずに、私達は婚姻届を預けて帰った。
 


12月24日は日曜日で、私達は その日に区役所に行く予定だった。
 

「あと3日だね。そしたら、廣澤麻有子だよ。」


帰りの車の中で、智くんに言われる。
 
「うれしい。ちょっと恥ずかしいし。でもやっぱりうれしい。」

私は、智くんの手を握ってしまう。


智くんも、私の手を強く握ってくれた。
 

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