ノクターン

「わあ。これ、智之さんと麻有ちゃん。可愛い。」数枚の写真。

私達が、初めて会った夏の。
 

「こんなに小さな頃から 一緒だったんだねえ。麻有ちゃん 可愛いね。」

お兄様が笑顔で言う。


智くんは ブルーのTシャツにデニムのハーフパンツを履いている。


私は ひまわりの柄のサンドレスを着ている。


妹とお揃いで 母が作ってくれた服。

私のお気に入りだった。


別荘の庭で撮った写真。
 

「わあ、懐かしい。麻有ちゃん 可愛いなあ。この洋服 何となく覚えているよ。」


二人並んで ニコっと笑っている写真。

二人で ピースをしている写真。



そんな数枚の写真の中に 奇跡的なショットの 一枚があった。
 


「わあ。素敵。お母様 この写真。」

お姉様が声を上げる。
 
「これは芸術的だ。映画のワンシーンみたいで。」

お兄様も言う。
 
「でしょう。これを見せたかったの。」

お母様は得意気に笑う。

お父様も満足そうで。
 


智くんと私は やっぱり見つめ合ってしまう。


熱い思いで。


涙が溢れてしまった私の頭を 智くんが 抱き寄せた。





みんなの前なのに。
 


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