ノクターン

智くんは、都庁の駐車場に車を停めた。

私達は デパートに向かう。

妹の嬉しそうな姿に 微笑みながら。
 


デパートのブランドショップに入ると 妹は急に気後れする。
 
「お姉ちゃん、ここで買ってくれるの?」
 

「美奈ちゃん、ここのバッグ欲しいって 言っていたでしょう。」

私は 智くんと見つめ合って微笑む。
 


「こんな高い物。本当に?」

妹らしくもなく 遠慮する。
 

「はじめてだから。いいよね。」

智くんは 私を見て言う。



私が笑顔で頷くと 妹も晴れ晴れした笑顔になる。
 


「麻有ちゃん。ちょっと贅沢過ぎるわ。」



並んだバッグの値段を見て 母は驚く。
 


「私、3年も働いているのに 今まで美奈ちゃんに 何も買ってあげてないの。区切りだし、ちょうど良い機会だから。これからも美奈ちゃんの力、借りるしね。」


と母に言う。

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