ノクターン

歩いて都庁までの道、妹は上機嫌に鼻歌混じりで。

父と母も、満足そうに微笑む。
 


「智くん、本当にありがとう。麻有子だけじゃなく 美奈子にまで。」

私の後ろを 並んで歩く父と智くん。
 

「いいえ。麻有ちゃんが いつも僕を大事にしてくれるから。僕の方こそ 麻有ちゃんに 感謝でいっぱいなんです。」

智くんは 優しい。


父と智くんの会話を 背中で聞いていた私と妹。


ニコニコ笑う妹に
 

「美奈子、よく見ておきなさい。相手を一番に考えるから 自分も大事にしてもらえるんだよ。自分が、自分が、だと 誰にも大事にされないからね。」


パパ、ありがとう。


パパは、いつでも私を見ていてくれるね。


私は、胸が熱くなる。

いつも みんなに愛されていたことを やっと実感できる私になれた。


智くんの愛に包まれて。
 
 
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