ノクターン

初めて智くんと旅行した次の日、

ランチタイムに 同期入社の美咲から
 
「何か、今日の麻有子 雰囲気が違う。」と言われた。


美咲は、社内で一番親しくしている 良い友達だった。

会社の愚痴や、恋の話しをお互いに聞き合っていた。
 


「実はね、康平と別れて。」

私は美咲に 智くんとのいきさつを話した。 
 
「えー、麻有子 O建設の彼、振っちゃったの?信じられない。でも、次の彼が I商事って。一体、麻有子のまわりは どれだけエリートが 集まるの。」

美咲の驚きがうれしかった。
 


「麻有子、すごく柔らかい表情している。角が取れたし。きっと麻有子と合うんだね、今度の彼は。幸せそうだもん。」
 

自分では 気付かなかったけれど、私も智くんと同じように 心に余裕ができたのだと思う。
 

だからこそ、結婚話しが怖かった。

智くんのご両親に反対されて、二人の間にしこりができる事が怖かった。


今のままでいいのに。いや、いずれは通る道だから。
 

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