ノクターン
12

初台の駅前で、軽く食事をして 私達は松濤の家に向かった。

智くんは 大森のアパートまで、車で送ると言ってくれた。
 

「初台から大森までって、電車だと不便だからね。」

松濤までは、タクシーで10分とかからない。

智くんは 車だけ取って行こうと言ったけれど、私は きちんと挨拶がしたかった。
 


私を玄関に待たせて、智くんがお母様を呼びに行く。
 

「麻有ちゃん、一緒なの?」と言いながらお母様は出てきた。
 
「こんばんは。夜分に、突然すみません。」

私が言うと、
 
「ちょっと上がってよ、ね。もうすぐお父さんも帰って来るから。」


夜の9時過ぎで、突然なのに お母様は きちんとした服装で 化粧もしている。


こういう所なのだと思う。


愛され続ける努力。パートナーを尊重する気持ち。


働いているお父様を きちんとしてお迎えする事。


私も見習おうと、強く思った。
 

< 79 / 270 >

この作品をシェア

pagetop