ノクターン
「え、麻有ちゃん来ているの?」
と言いながら お父様は リビングに入ってくる。
「夜分にお邪魔しています。お疲れの所、すみません。」
私は立ち上がって挨拶をする。
「座って、座って。そんなに気を使わないで。」
お父様は 脱いだコートをお母様に渡しながら 私達の対面に座る。
「マンション、見て来た?どうだった。」
と気軽に声をかけてくれる。
とても偉大な人なのに。
もし社員だったら 話す事さえできない程の人なのに。
私にも、ただの父親の顔で接してくれる。
「麻有ちゃん、気に入ってくれたよ。」
智くんが、私の方を見ながら答えてくれる。
私も頷いて、
「素敵なお部屋でした。」と笑顔で答える。
「リフォームは、内装屋さんと、直接相談した方がいいだろう。連絡しておくよ。」